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  私の選んだミュージカルナンバー、ベスト30(その3)
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 このページでは、次のベスト30のうち11~20のミュージカルナンバーと、そのナンバーの入っているミュージカル映画の解説をしています。番号と順位は関係ありません。
 〔1~10の解説は(その2)、21~30の解説は(その4)でしています〕
 関連ページ……『私の映画企画』「夢のミュージカル・コンサート」

私が選んだミュージカルナンバー、ベスト30
1.「サウンド・オブ・ミュージック」(『サウンド・オブ・ミュージック』)
2.「私のお気に入り」(『サウンド・オブ・ミュージック』)
3.「エーデルワイス」(『サウンド・オブ・ミュージック』)
4.「トゥナイト」(『ウエストサイド物語』)
5.「マリア」(『ウエストサイド物語』)
6.「愛はどこに」(『オリバー!』)
7.「気楽にやれよ」(『オリバー!』)
8.「買ってくださいな」(『オリバー!』)
9.「踊り明かそう」(『マイ・フェア・レディ』)
10.「君住む街角」(『マイ・フェア・レディ』)
11.「乙女のよろこび」(『キャメロット』)
12.「ひそかな想い(筆者訳)」(『キャメロット』)
13.「もしもあなたと別れるなら」(『キャメロット』)
14.「シャル・ウィ・ダンス」(『王様と私』)
15.「ハロー・ヤング・ラバーズ」(『王様と私』)
16.「アイ・ハブ・ドリームド」(『王様と私』)
17.「バリ・ハイ」(『南太平洋』)
18.「魅惑の宵」(『南太平洋』)
19.「もしもあなたを愛したら」(『回転木馬』)
20.「ハロー・ドーリー!」(『ハロー・ドーリー!』)
21.「ピープル」(『ファニー・ガール』)
22.「サンライズ・サンセット」(『屋根の上のバイオリン弾き』)
23.「見果てぬ夢」(『ラ・マンチャの男』)
24.「リビング・イン・ザ・シャドウ」(『ビクター/ビクトリア』)
25.「ソー・イン・ラブ」(『キス・ミー・ケイト』)
26.「虹の彼方に」(『オズの魔法使』)
27.「雨に唄えば」(『雨に唄えば』)
28.「ショウほど素敵な商売はない」(『アニーよ銃を取れ』)
29.「2ペンスを鳩に」(『メリー・ポピンズ』)
30.「メモリー」(『キャッツ』)

解説
 最初に映画の説明を簡単にして、そのあとミュージカルナンバー、および映画について解説します。

○『キャメロット』(1967年)
監督 ジョシュア・ローガン
主演 バネッサ・レッドグレーブ、リチャード・ハリス
作曲 フレデリック・ロウ  作詞 アラン・ジェイ・ラーナー
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。アーサー王伝説を元にした小説『円卓(えんたく)の騎士』を『マイ・フェア・レディ』の作詞作曲のコンビがミュージカル化した。アーサー王と王妃グエナビアと騎士ランスロットの三角関係を描く。演劇の主演はジュリー・アンドリュースとリチャード・バートン。

11.「乙女のよろこび」(『キャメロット』)
 フレデリック・ロウ(作曲)とアラン・ジェイ・ラーナー(作詞・脚本)のミュージカルとしては、『マイ・フェア・レディ』は大抵の人が知っていると思いますが、この『キャメロット』を知っている人はほとんどいないのではないかと思います。その第一の原因は、名歌が多くて音楽のレベルは『マイ・フェア・レディ』に匹敵するにもかかわらず、「踊り明かそう」のような大ヒットした歌がなかったこと。第二には、映画の出来がイマイチであり、配役も地味で、かつその歌もヘタだったこと。第三には、『マイ・フェア・レディ』『ラ・マンチャの男』『オペラ座の怪人』のような日本での演劇の上演がなかったことがあげられます。もし、宝塚歌劇あたりがこのミュージカルを上演してたなら、この作品を知っている日本人はかなり増えていたでしょう。しかしアメリカにおいては、アメリカ史上最も人気のある大統領の一人であるジョン・F・ケネディがこのミュージカルが大好きで、その政権がキャメロットと呼ばれていたということなので、その知名度はずっと高いと思われます。(もし仮に、日本でこれからこのミュージカルを上演するとしたら、私が選ぶ理想的なキャストは、アーサー王に市村正親(まさちか)、グエナビアに倉木麻衣となります)
 この「乙女のよろこび」という歌は、すがすがしいメロディーの名曲です。しかし、私はこの映画のこの歌の場面を見て、ひどくがっかりしました。というのも、私は当時まだ十三歳でしたが、この映画を見る前から舞台で主役を務めたジュリー・アンドリュースのこの歌をレコードで何十回も聴いていて、この場面を想像していたからです。王妃となるグエナビアは、この歌を雪の積もった森の中で、木々の間を通り抜けながら歌っているに違いないと。確かに、映画では雪の積もった森の中で歌っていましたが、ソリの上に乗りながらの歌唱で、全くムードがない。演じた女優は、当時は新人のバネッサ・レッドグレーブ。彼女は演技派ですが、ややオバサンぽい雰囲気で、この映画のヒロインには合わない感じでした。しかし、何よりがっかりしたのは、その歌です。彼女は歌では素人(しろうと)であるにもかかわらず、製作者は『マイ・フェア・レディ』のようにマーニー・ニクソンに歌の吹き替えを依頼するということはしませんでした。まあ、彼女の歌を映画で初めて聴いた人は、この歌はこんなものかと思ったのでしょうが、当時の私としては、ちょっと聴けたものではないという状態。歌がヘタなために、このミュージカルの音楽の素晴らしさが全く伝わってこない。ミュージカル映画としては致命的な欠陥と言わざるをえません。

12.「ひそかな想い(筆者訳)」(『キャメロット』)
 この歌は王妃グエナビアが歌う歌としては最も美しいナンバーといえるでしょう。「I Loved You Once In Silence」という歌のタイトルの訳としては、昔のレコードに「黙って愛したけど」というのがありましたが、あまりしっくりこないので、私が勝手に「ひそかな想い」という訳を付けました。この歌のほかにも、次にあげる「もしもあなたと別れるなら」や「もう一度見つめる前に」「キャメロット」「喜びもえる五月」「グエナビア」など名ナンバーがいっぱい。もし手に入るのでしたら、ジュリー・アンドリュースが主演した舞台の歌を録音した輸入CDを鑑賞されることをおすすめします。かつてのケネディ大統領も、このレコードをよく聴いていたということです。
 この映画の製作者は、映画会社のワーナーブラザーズを創立したワーナー四兄弟の末弟(ばってい)で、『マイ・フェア・レディ』と同じジャック・L・ワーナー。映画『サウンド・オブ・ミュージック』の試写会が終わったあと、皆が絶賛する中で、彼は大声で悪口を言っていたということです。まあ、性格が悪くてもプロデューサーとして有能ならいいのですが、この映画の配役などを見ると、どうも適切な判断力を持っているとは思えません。それでも『マイ・フェア・レディ』の配役は、まあ納得できます。当時ジュリー・アンドリュースはブロードウェーではスターになっていたものの映画デビュー前でしたし、トップスターのオードリー・ヘップバーンを主役に起用したことは妥当だったでしょう。彼女がドレスアップした姿は息を()むような美しさでしたから。しかし、『キャメロット』が映画化されたときは、すでにジュリー・アンドリュースはハリウッドのミュージカルスターになっていましたし、彼女以上にこのミュージカルの歌をうまく歌える女優はいなかったのですから、やはりジュリーを起用すべきだったと思います。それでもほかの女優を使うなら、当然ヘップバーンのようなスターになるはずですが、当時無名で適役でもなく歌も素人のバネッサ・レッドグレーブを抜擢(ばってき)し、しかも歌の吹き替えもしなかったわけです。このプロデューサーはどうかしていると思われてもしかたがないでしょう。実際、この映画は、莫大(ばくだい)な製作費を回収することはできず、赤字になったそうです。
 監督は『南太平洋』のジョシュア・ローガン。『南太平洋』は映画としては失敗作だったので、どうしてわざわざ彼を起用したのかわかりませんが、『キャメロット』のほうは、ずっと「映画的」な演出になっていたように思います。まあ、『南太平洋』のあと、ロバート・ワイズ監督の『ウエストサイド物語』や『サウンド・オブ・ミュージック』といった衝撃的な大傑作が作られたので、彼なりにミュージカル映画の演出の勉強をしたのでしょう。しかし、やはりワイズ監督は格がはるかに上。『サウンド・オブ・ミュージック』のゴールデンコンビであるワイズ監督とジュリー・アンドリュースは、のちにオリジナルのミュージカル映画である『スター!』を作ります。しかし、脚本がひどくて失敗しました。もしこの二人が『スター!』ではなく『キャメロット』を作っていたなら……と私は今まで何度考えたことか。

13.「もしもあなたと別れるなら」(『キャメロット』)
 映画ではランスロット役のフランコ・ネロが歌います。この映画がきっかけで彼はバネッサ・レッドグレーブと結婚しました。しかし、歌そのものは、舞台のロバート・グーレという俳優が歌ったもののほうがはるかにいい。素晴らしい美声の持ち主です。この歌も『マイ・フェア・レディ』の「君住む街角」と同じようにヒット曲になっていいような美しいメロディーで、「知られざる名歌」といっていいでしょう。
 舞台でアーサー王役を演じたリチャード・バートンは、エリザベス・テーラーと「二回」結婚した名優ですが、ミュージカル俳優ではありません。声量は充分すぎるほどですが、ややダミ声で、ジュリー・アンドリュースとロバート・グーレの美声の間に彼の歌が入ると、ちょっと耳ざわりな感じもします。しかし、フレデリック・ロウ作曲のメロディーはみな美しいので、慣れると楽しめるでしょう(映画『ジャッキー/ ファーストレディ 最後の使命』では、彼が歌う「キャメロット」が流れています)。


○『王様と私』(1956年)
監督 ウォルター・ラング
主演 デボラ・カー、ユル・ブリンナー
作曲 リチャード・ロジャース  作詞 オスカー・ハマースタイン二世
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。シャム(現在のタイ)の王室の家庭教師をしたイギリス人の女性の体験が『アンナとシャム王』という小説になり、のちに映画化されました。それを見た当時のブロードウェーのミュージカルスターであるガートルード・ローレンスが、ロジャース、ハマースタインのコンビにミュージカルにすることを持ちかけたわけです。舞台の主演は彼女とユル・ブリンナー。映画でのアンナ役はデボラ・カーになりましたが、歌はマーニー・ニクソンという歌手が吹き替えています。

14.「シャル・ウィ・ダンス」(『王様と私』)
 このミュージカルで最も有名な歌。このタイトルはのちに周防(すお)正行監督の映画にも使われましたし、この歌はその主題歌にもなりました。また、CMでも使用されているので、若い人でも知っていると思います。ミュージカルでは、アンナが王様にダンスを教えるシーンで歌われますが、舞台で王様を演じたユル・ブリンナーは、映画でも主演してアカデミー主演男優賞を受賞しました。
 このミュージカルは、実話が映画化されて、それをロジャース、ハマースタインのコンビが演劇のミュージカルにしたという点、そしてヒロインが上流階級の家庭教師に就任するというストーリーなど、『サウンド・オブ・ミュージック』とよく似ています。もちろん映画の出来は『サウンド・オブ・ミュージック』のほうがはるかに上ですが、『南太平洋』のように退屈な映画ではなく、なかなか楽しめる作品に仕上がっています。ただ、実話が元になっているとはいっても、『サウンド・オブ・ミュージック』以上に大きく脚色されているらしく、モデルとなった王様は、実際はこの映画の主人公のように粗野で独裁的な人物ではなかったということ。したがって、王室に対する尊敬の念が強いタイでは、このミュージカルの上映や上演は禁止されているということです。

15.「ハロー・ヤング・ラバーズ」(『王様と私』)
 このミュージカルの企画を考え、ブロードウェーの舞台で主演もしたガートルード・ローレンスというのは、当時のブロードウェーのミュージカルスターだったそうです。のちに彼女の半生が『スター!』というオリジナルのミュージカル映画になり、ジュリー・アンドリュースが彼女の役を演じました。映画の『王様と私』ではデボラ・カーがアンナ役を演じましたが、彼女は歌が歌えないため、のちの『ウエストサイド物語』や『マイ・フェア・レディ』と同じくマーニー・ニクソンが歌の吹き替えをしています。
 『スター!』というのは『サウンド・オブ・ミュージック』のロバート・ワイズ監督のミュージカル映画だったので、恐ろしく期待して見たのですが、めちゃくちゃ期待はずれの映画でした。ストーリーもつまらなかったのですが、ガートルード・ローレンスの伝記映画なのに『王様と私』の舞台は省略してあり、ジュリー・アンドリュースの「シャル・ウィ・ダンス」が聴けなかったことも残念でした。ところが、1992年に、ジュリー・アンドリュースの歌う『王様と私』が録音されてCDが発売されたのです。彼女がブロードウェーの舞台に立ったわけではありませんが、王様の歌はベン・キングスレーが歌うなどして、舞台を忠実に再現したようなCDを作ったわけです。「ハロー・ヤング・ラバーズ」はこのミュージカルの中で最も美しい曲だと思いますが、ジュリー・アンドリュースの歌うこの歌はは絶品です。

16.「アイ・ハブ・ドリームド」(『王様と私』)
 このミュージカルには上の二曲のほかにも「ゲティング・トゥ・ノウ・ユー」「木陰のくちづけ」など優れたナンバーが多いですが、「アイ・ハブ・ドリームド」というのもきれいな曲です。『サウンド・オブ・ミュージック』では、主役の二人の恋のほかに、脇筋として長女のリーズルの恋が描かれますが、この『王様と私』では、アンナと王様の友情というメインストーリーとともに、若い二人の恋物語が同時に進行します。この歌はその二人が歌うナンバーです。


○『南太平洋』(1958年)
監督 ジョシュア・ローガン  
主演 ミッツィー・ゲーナー、ロッサノ・ブラッツィ
作曲 リチャード・ロジャース  作詞 オスカー・ハマースタイン二世
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。太平洋戦争中の南太平洋の島を舞台にした『南太平洋物語』という小説が原作。その島における二組の男女の恋を描く。監督は演劇の演出をしたジョシュア・ローガンが担当しました。

17.「バリ・ハイ」(『南太平洋』)
 南太平洋の自然の美しさを歌いあげた神秘的な名曲です。この映画は音楽が素晴らしいため大ヒットしましたが、映画そのものはかなり退屈な出来でした。監督のジョシュア・ローガンはブロードウェーの舞台の演出もしたため、演劇に忠実に映画化したのだと思いますが、『マイ・フェア・レディ』などと異なり、この映画ではそれがうまくいっていません。この「バリ・ハイ」のシーンでも、舞台で何色もの照明を当ててムードを出したように、カラーフィルターで次々と色を変えたりしてましたが、それが見事に失敗。目を閉じて美しい音楽だけ聴いていたほうがいいという感じになってしまいました。

18.「魅惑の(よい)」(『南太平洋』)
 「バリ・ハイ」とともにこのミュージカルで最も有名なナンバーです。このミュージカルの作曲を担当したリチャード・ロジャースは、私が最も好きな作曲家ですが、『オクラホマ』『回転木馬』『南太平洋』『王様と私』『サウンド・オブ・ミュージック』などで膨大な数の名曲を生み出していて「ミュージカルの王様」と言われています。ポピュラー音楽にかぎっていえば、これ以上の作曲家はいないのではないでしょうか。これに対し、「いや、ポピュラー音楽の最高の作曲家はビートルズだ」という人もいるかもしれません。しかし、仮にそうだとしても、ビートルズが「ポピュラー音楽におけるベートーベン」なら、リチャード・ロジャースは「ポピュラー音楽におけるモーツァルト」というべきでしょう。私にいわせれば、まさに「神のような作曲家」です。
 その「神のような作曲家」とタレントの井上順が親しかったということを以前テレビで知り、驚きました。まあ、ロジャースが(かに)座の生まれで、井上順は魚座なので相性もよかったのでしょうが、井上順がアメリカへ行ったとき、ロジャースは彼のために歓迎のパーティーを開いてくれたということです。井上順がそのパーティーでロジャースの「マイ・ファニー・バレンタイン」を、彼の作った曲とも知らずに歌ったとき、ロジャースはわざとピアノの伴奏を間違えたりしたということで、茶目っ気もある人物だったようです。


○『回転木馬』(1956年)
監督 ヘンリー・キング
主演 ゴードン・マクレー、シャーリー・ジョーンズ
作曲 リチャード・ロジャース  作詞 オスカー・ハマースタイン二世
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。『リリオム』という戯曲(ぎきょく)が原作。天国にいる主人公が下界に降りて家族に会いに行くというファンタジー。

19.「もしもあなたを愛したら」(『回転木馬』)
 私はこの映画は映画館ではなくて十代のときにテレビで見たのですが、最初のシーンを見て「何だこれは」と思いました。そのシーンは天国の場面なのですが、クリスマスツリーに飾ってあるような星がいくつも垂れ下がっていて、なんか冗談のような感じでした。これが演劇ならそれでもいいのでしょうが、リアリティが求められる映画では、やはりもっとリアルな描写の天国でなければまずいでしょう。いずれにしても、ロジャース、ハマースタインのミュージカルとしては『南太平洋』『王様と私』『サウンド・オブ・ミュージック』のようなスケールの大きさはなく、いかにも小品という感じです。
 ただ、音楽に関していえば、優れたミュージカルナンバーがいくつもあります。演奏のみの「回転木馬のワルツ」をはじめ、「人生はひとりではない」、そしてこの「もしもあなたを愛したら」など。主人公の男性が歌うこの歌もいいですが、ジュリー・アンドリュースもこの歌をカバーしていて名唱です。


○『ハロー・ドーリー!』(1969年)
監督 ジーン・ケリー
主演 バーブラ・ストライサンド、ウォルター・マッソー
作曲・作詞 ジェリー・ハーマン
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。若い未亡人の恋と、若いカップルの恋を平行して描く、巨費を投じた絢爛(けんらん)豪華なミュージカルコメディ映画。

20.「ハロー・ドーリー!」(『ハロー・ドーリー!』)
 この映画の製作、脚本を担当したのは、『王様と私』『ウエストサイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』や、ヒッチコックの傑作サスペンスである『北北西に進路を取れ』の脚本を書いた名脚本家のアーネスト・リーマンです(スペルの“Lehman”からするとレーマンのように思え、ネットでは、そう表示しているケースが多いのですが、『リーマン・ショック(Lehman Shock)』と同じく、発音や従来の表記はリーマンです)。リーマンはかつて舞台の『サウンド・オブ・ミュージック』を見て、その映画化を最初に考え、監督の選考にもかかわりました。そしてミュージカル映画のトップスターであり、『雨に唄えば』ではスタンリー・ドーネンと共同で監督もしたジーン・ケリーに監督の依頼をしたということです。しかし彼は、このミュージカルは映画化しても客は来ないよと言って断りました。しかし、彼の予想に反して『サウンド・オブ・ミュージック』は当時、映画史上最高の興行収入をあげた作品になったわけです。まあ、結果的には監督がロバート・ワイズになってよかったわけですが、この『ハロー・ドーリー!』ではリーマンは再びジーン・ケリーに監督を頼み、今度は引き受けてもらいました。しかし、皮肉にも、この巨費を投じた豪華絢爛たるミュージカルコメディは、予想したほど客が入らず赤字になってしまったのです。
 では、赤字になったからつまらない映画かというと、決してそんなことはありません。ストーリーの面白さはイマイチですが、とにかくミュージカルシーンがメチャクチャ豪華で楽しい。歌やダンスがこれほど楽しいミュージカルというのも珍しいといっていいでしょう。バーブラ・ストライサンドとジャズの王様のルイ・アームストロングが共演する「ハロー・ドーリー!」をはじめ、「日曜は晴れ着で」や「パレードが通り過ぎる前に」など、豪華なセットと群舞シーンによる傑作ミュージカルナンバーがいくつもあります。


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