SABOの八つの世界   

      シナリオ『アフロディーテ』 17
風水の真実ザ・有名人占星術映画・Jポップエッセイ私の映画企画私のマニフェスト八道州・七新都市構想ここがおかしい 日本人類の歴史を変える新哲学

HOME(トップページ)

メッセージ

私のプロフィール

メール・コピー等について

サイトマップ

SABOの東京名所写真

  『アフロディーテ』に戻る

○ 同・居間
  入ってきた佐伯、足早に玄関の方へ向かう。
  続いて入ってきた矢吹、その佐伯のあとを急いで追い、
矢吹「待てよ、佐伯」
  佐伯、立ち止まると、矢吹の方を振り向き、
佐伯「矢吹……」
  と言ってポケットから例の二枚の写真を取り出して、矢吹に示しながら、
佐伯「これは単なる偶然だと思うか。……とんでもない。今までの一連のゴタゴタも、みな運命
 が仕組んだことなんだ。僕をあそこへ行かせるためにね。……あのマリア像が呼んでるんだ」
矢吹「……」
  佐伯、かすかに笑みを浮かべると、玄関の方へ行く。
 「おい、コートだ」
  という佐伯の声が玄関から聞こえる。
  矢吹、どうすべきか考えながら奥の廊下の方を振り返る。

○ 同・玄関
  下男がコートを持ってくるのを待っている佐伯。しかし、矢吹のことが気になり、居間へ戻る。

○ 同・居間
  姿を見せた佐伯、鋭い眼差しで見つめながら奥の方へ行く。

○ 同・廊下
  矢吹が電話のダイヤルを回している。受話器を耳に当て、
矢吹「……もしもし……あ、実は誘拐が起きたんです。……ええ、そうです。……はい、私は……」
  と言いかけて、後ろの気配に振り返ろうとする。が、そのとたんに頭をピストルの握りで殴
  られ、倒れて気絶する。
  ピストルを持ってその矢吹を見下ろしている佐伯。ピストルをしまうと、向こうの声が漏れ、
  垂れ下がって揺れている受話器を元へ戻す。
  コートを持った下男が佐伯を探してやって来る。そして床に倒れている矢吹を見ると、びっ
  くりして佐伯と見比べる。
  反対側からコートを着て鞄を持ち、出かける支度(したく)をした執事がやって来て、同じく愕然とする。
佐伯「(執事に)地下室に閉じ込めておくんだ。いいか、騒いでも絶対に出すんじゃないぞ」
執事「(動揺しながらも)……はあ……」
佐伯「(下男に)わかったな」
下男「(あわてて)……は、はい」
  佐伯、下男の持っている厚手のコートを取ると、玄関の方へ行く。
  執事と下男、愕然としたまま、気を失っている矢吹を見下ろしている。

○ 同・玄関
  雪の降りしきる外へと出てゆく佐伯。

○ 同・書斎の机
  カメラ、その上のマリア像の写真に近づいて……
                                  (O・L)

○ オリュンポス寺院
  二十年前のあのときと全く同じように(もっとも今度は夜だが)、雪の中に見えるその巨大
  な全貌(ぜんぼう)

○ 同・近くの道
  寺院から百メートル余り離れた場所の道路。ロールスロイスがやって来て、土地が低くなっ
  ていて寺院からは見えない場所に止まる。
  自分で運転してきた佐伯、車から降りると、コートを着て手袋を付ける。そして少し坂を登
  り、寺院を見渡せる位置に来ると、決心したように雪の中を寺院に向かって歩きだす。

○ 佐伯邸・地下室
  気絶した矢吹が床の上に倒れている。が、その頭がかすかに動く。おもむろに目をあけると、
  ゆっくりと上体を起こそうとする。しかし、後頭部の痛みに顏をしかめ、そこを手で押さえ
  る。ようやく上体を起こすと、あたりを見回し、フラつきながら立ちあがる。そしてドアへ
  行き、あけようとするが、鍵がかかっている。そこで、ノブを両手で持ち、ガタガタ揺さぶる。

○ 同・地下の廊下
  地下室から矢吹がドアを叩きながら叫ぶ声が漏れてくる。
 「おい、あけろ、あけるんだ。……早く警察へ知らせないと、社長の命が危ないんだ。それが
 わからないのか、おい」

○ 同・地下室
  矢吹、いらだたしげにドアを思いきり蹴飛ばす。が、それが後頭部に響いたらしく、再び顏
  をしかめて手で押さえる。そしてため息をつくと、あたりに目を配る。すると、高い所にあ
  る鉄棒のはまった窓から、明かりと共に雪が吹き込んでいるのに気づく。
  ここで矢吹、初めて寒さに気づいたように自分の両肩を抱いて体をブルッと震わすと、隅に
  ある小さな椅子に腰かけ、うずくまる。

○ オリュンポス寺院の前
  入口にやって来た佐伯、ピストルを取り出すと、それを構えながら扉を押す。

○ 同・礼拝堂
  佐伯、礼拝堂全体に目を配りながら中へ入ると、扉を閉じ、柱の陰にすばやく身を隠す。そ
  して、その柱から次の柱、さらに奥の柱の陰へと進んでゆく。
  が、ここで佐伯、何かを思いついたような表情をする。そして、そっと柱の陰から顏を出す
  と、礼拝堂の奥の中央を注視する。そこには、やはり二十年前と同じように、あのマリア像
  があった。この不思議な因縁。そして、その顔の美紀に似た神秘的な美しさ。そのために佐
  伯は、一瞬彫像に心を奪われ、我を忘れてしまう。
  
突然、銃声と共に、弾丸が柱の佐伯のすぐ近くの場所にぶつかる。
佐伯、反射的に柱に身を隠すと、その反対側から姿を現し、二階の廊下にいる男を撃つ。
倒れる男。
急に佐伯の頭上の廊下が騒がしくなる。男たちの話し声や歩き回る音が聞こえる。
階段の方へ進む佐伯。が、再び、佐伯に向けて撃たれた弾が佐伯の近くの壁に当たる。
今度は三階の廊下の男である。佐伯、その男に向けて三発連続して撃つ。弾が命中した男は、
礼拝堂へ()逆様(さかさま)に落ちる。
階段へ向かう佐伯。

○ 同・階段
  ピストルを構え、一段一段ゆっくりと登ってくる佐伯。踊り場を曲がった所で、二階の廊下
  に男が姿を現し、佐伯を撃とうとする。が、その前に佐伯の撃った弾が男に当たり、男は階
  段をころげ落ちる。

○ 同・二階の廊下
  やって来た佐伯、あたりに目を配りながら進む。突然、一つの部屋から男が飛び出し、佐伯
  を撃とうとする。が、その男も佐伯に倒される。
  しかし、その男の出てきた部屋から別の男の小さな声が漏れている。佐伯、銃を構えてその
  入口に行くと、慎重に中を調べ、入る。

○ 同・一室(A)
  その声が漏れていたのは、無線機である。
声 「おい、応答せよ。いったい何があったんだ。応答せよ。どうしたんだ……」
  佐伯、その無線機に近づくと、発信のスイッチを押し、
佐伯「こちら異常なし。どうぞ」
声 「ん? おまえは誰だ。合言葉を言え」
  佐伯、仕方なしに無線のスイッチを切ると、部屋から出る。

○ 同・二階の廊下
  佐伯、銃を構えたまま、隣の部屋のドアをあける。そして用心深く中をのぞくが、誰もいない。
  佐伯、さらに隣の部屋のドアへ行き、あけようとする。が、鍵がかかっている。そこでドア
  を叩き、
佐伯「美紀さん、そこにいますか。佐伯です。いたら返事をしてください」
  すると、中から驚いたような声で、
 「は、はい」
  というのが聞こえる。確かに美紀の声である。
  佐伯、ほっとしたため息をつき、
佐伯「今、銃で鍵を壊しますから、ドアから離れていてください」

○ 同・一室(B)
  立っている美紀、動揺した様子で、
 「はあ」
  と言って壁際へあとずさる。

○ 同・二階の廊下
  佐伯、ドアへ向けて三発ピストルを撃ち、ドアを蹴飛ばす。

○ 同・一室(B)
  激しい勢いでドアがあくと、佐伯がすばやく入ってきて、美紀を見る。
  美紀、びっくりした様子でたたずんでいる。
佐伯「……大丈夫ですか」
美紀「……ええ」
佐伯「ケガはありませんか」
美紀「いえ、大丈夫です」
佐伯「そうですか、それはよかった」
  佐伯、美紀が無事だったことと、再び美紀に会えた喜びとで、目を輝かせて美紀を見つめて
  いる。が、すぐにギャングのことを思い出し、
佐伯「さ、早くここから抜け出しましょう」
美紀「はあ……」
  佐伯、部屋から出る。美紀も事情が飲み込めないまま、それに続く。

○ 同・二階の廊下
  佐伯と美紀、階段へ向かう。が、美紀、横たわっているギャングの死体を見ると、顔が青ざ
  め、恐る恐るよけながら通る。

○ 同・階段
  横たわっている男の死体。美紀、同じく恐ろしそうによけながら、佐伯に続いて降りてゆく。

○ 同・礼拝堂
  出入口の方へ向かう二人。しかし佐伯、急に立ち止まると、何かを思いついたらしく、美紀
  を振り返る。そして美紀とマリア像の顏を見比べ、目を輝かす。
  美紀、変な顏をして同じくマリア像を振り返り、見てみるが、わけがわからず、狐につまま
  れたような顏をしている。
  佐伯、再び出入口の方を向くと、歩きだす。美紀も付いてゆく。

○ 同・前
  外は相変わらずの雪である。扉があき、佐伯と美紀が姿を見せる。
  佐伯、自分のコートを脱ぎ、
佐伯「さあ、これを着てください」
美紀「はあ、どうもすいません」
  とそれを受取り、体を被う。
佐伯「もうすぐギャングの仲間たちが来るから急ぎましょう」
美紀「(顏をしかめ)はあ」
  二人、外へ出ると、車の方へ急ぐ。

○ 同・近くの道
  車の所に二人、やってくる。佐伯、後部座席のドアをあけ、
佐伯「さあ、乗って」
  美紀、乗る。
  佐伯、ドアを閉めると、急いで運転席に乗る。

○ 車の中
  車、走り出す。
  が、少し行くと、ガクンという衝撃とともに、車は止まってしまう。
  その弾みで、前につんのめる美紀。
  後ろの車輪が道の(くぼ)みに落ちてしまったのである。
  佐伯、必死にエンジンを吹かす。しかし、タイヤは雪の中で空回(からまわ)りするばかりである。
  後ろの座席で不安そうにしている美紀。
  佐伯、マイクを通して美紀に話す(後部座席との間はウインドーで仕切られているので)。
佐伯「すいません。ちょっと降りてくれませんか」
美紀「はあ」

○ 道
  美紀、心配そうに空回りするタイヤを見つめている。しかし、車は依然として動き出しそう
  にない。
  運転席の佐伯、しばらくするとあきらめ、大きくため息をつく。そして車から降りると、後
  部車輪を恨めしそうに見つめる。
佐伯「(ため息をつき)仕方がない、寺院へ戻りましょう」
美紀「(不安そうに)はあ」


 『アフロディーテ』に戻る  シナリオ『アフロディーテ』18に進む  このページのトップに戻る